2022年神無月の日々 ~ 失われた時を求めて

金木犀が香りはじめますと、子供の頃の記憶が蘇り、懐かしい気持ちでいっぱいになります。
香りにより記憶が蘇ることを『プルースト効果』と呼びます。
20世紀フランスの作家、マルセル・プルーストの大作『失われた時を求めて』の中で、主人公が、紅茶に浸したマドレーヌの香りをきっかけに、幼少期の記憶を鮮やかに蘇らせるとの描写から、そう呼ばれるようになりました。
私は、毎年、金木犀の香りにより、小学校時代の運動会を思い出します。
当時から、母は、仕事中心で忙しく、学校の参観日などには、たいてい祖母や親戚の人に来てもらっておりました。
それはそれで嬉しくはありましたが・・・
ある年の運動会に、母が来てくれまして、いつもは運動音痴で、かけっこもマラソンも後ろからベスト3が定位置でした私が、ものすごくはりきり、障害物競走で、人生初の2位となりました。
その日の校庭は、金木犀の香りに満ちていました。
母は、当時、たいへん口数の少ない人でしたし、また早朝から夜中まで仕事をしておりましたので、親子の会話は少ないものでした。
お友達のお誕生日会にお呼ばれし、その子が、いつもお母さま手作りの素敵なワンピースを着てはりましたこと、お母さま手作りのケーキやご馳走をふるまわれましたこと、などを、とても羨ましく思っておりました。
けれども、この年になりまして、ようやく、母の人となりや思いを察することができるようになりました。
毎日、睡眠時間4時間で働き(あ、夫もそうですね)、休日には、当時ご近所に住んでお手伝いしてもらっていました親戚縁者の若い人たちのために、大量のカレーやシチューを作り、それを何の苦も無いように、淡々とこなしておりました母の姿を思い出します。
それでいて、いつも身綺麗でお洒落でした。
元々、いわゆる『愛想の無い』人でしたので、それを寂しく思うこともありましたが、今にして、私には真似のできないスーパーウーマンでしたと、つくづく思い入ります。
私には、とうてい無理・・・
年をとりまして、少しずつ、感情を表現することも増えました母ですが、今も、本心を語ることは少なく、推察するしかありません。
実家へは、以前のように自由には出入りできなくなりました状況ですし、父とは疎遠なままですが、辛いことも何もかも、自分の中に閉じ込め、折り合いを付けてきましたでしょう母には、今生これからの人生は、少しでも笑顔を体験してほしいと願うばかりです。
ありがとうございます
(追記)
今月は、孫たちの運動会や、そろばん進級試験合格のお祝いなどで、会える機会が度々あり、嬉しいことでした
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